10月25日(日)15:00 OPEN。Chris Cocoが神戸に登場する。
もともとは須磨で開催予定だったが、台風の影響により会場が急遽変更。新しい会場は、神戸・元町のder kiten Atelier。JR・阪神元町駅からすぐの場所にあるアート/イベントスペースだ。
須磨の海辺から元町へ。場所は変わったが、今回のChris Cocoという人選を考えると、やはりこの日はかなり興味深い。
なぜならChris Cocoは、単なる「チルアウトDJ」ではない。
彼のキャリアを遡っていくと、アシッド・ハウス、DJ Magazine、Café del Mar、José Padilla、Warp Records、BBC Radio 1、Robbie Williams、そして現在のBalearicまで、90年代以降の英国クラブ・カルチャーとイビサの歴史が一本につながってくる。
そして、その物語の重要な転換点にあるのが、Café del Marだ。


Chris CocoがCafé del Marに出会った頃
Chris Cocoは1980年代後半、イギリスのアシッド・ハウス・ブームの中でDJを始めた。ブライトンの伝説的クラブThe Zapでは、自身の「Coco Club」を開催。つまり、彼のルーツは最初から「夕陽を眺めながら聴くチルアウト」だったわけではない。むしろ、かなり正統派のクラブDJだった。
その後、Chris CocoはDJ Magazineの編集者として活動する。そして、この仕事でイビサを訪れたことが、彼の音楽人生を大きく変えることになる。
本人の公式プロフィールには、アシッド・ハウス期からDJを始め、その後、Café del Marでの忘れられない体験を経てBalearicへ向かったと記されている。現在も本人は、DJ、プロデューサー、ジャーナリスト、ラジオ・パーソナリティなど、複数の顔を持つ。
後年のインタビューでも、Chris CocoはCafé del MarでJosé Padillaがプレイする「ジャンルなどお構いなしの音楽のミックス」を聴いたことが、Balearicという考え方を決定的にしたと語っている。
そして1994年、『Café del Mar – Volumen Uno』が出る
ここはレコード好きならぜひ押さえておきたいところ。
José Padillaによる歴史的名コンピ『Café del Mar – Volumen Uno』が英国のReactからリリースされたのは1994年。Café del Mar公式サイトにも1994年作品として掲載されている。

現在のCafé del Marコンピといえば、「海」「夕陽」「チルアウト」というイメージを思い浮かべる人が多い。
しかし、第1弾の内容を改めて見ると、かなり異質だ。
William Orbit、The Sabres Of Paradise、Penguin Cafe Orchestra、Sun Electric、Leftfield、Sisterlove、Underworld、A Man Called Adamなどが並ぶ。
つまり、
Ambientだけでもない。
Houseだけでもない。
Technoだけでもない。
RockでもElectronicaでもある。
この雑食性こそ、José Padillaが作ったCafé del Marの音楽的世界だった。
DJ MagのBalearic史でも、Café del Marの最初のコンピレーションは1994年に英国のReactから発売され、イビサのより穏やかな音楽を世界へ広める大きなきっかけになったとされている。だから、この第1弾を「チルアウト・コンピレーションの元祖」とだけ考えると少し違う。当時の英国クラブ・ミュージックとイビサの自由な選曲感覚が交差した記録として聴くと、ものすごく面白い。
そして、この時代のChris CocoはDJ Magazine側にいた
ここが今回の来日を語るうえで特に面白いポイント。Chris Cocoは、後からCafé del Marを知ったDJではない。
Café del Marがまだ現在ほど世界的なブランドになっていなかった90年代に、DJ Magazineの仕事を通してイビサを体験していた人物だ。
つまり、
DJ Magazine
↓
Ibiza
↓
Café del Mar
↓
José Padilla
↓
Balearic
という流れが、Chris Coco自身のキャリアの中に存在する。しかも1994年にはCafé del Marの第1弾コンピレーションが登場する。この時代のイビサをリアルタイムで経験していたことが、現在のChris Cocoを理解するうえでかなり重要だ。
なお、自分も当時DJ Magazineのイビサ特集を読んでCafe Del Marやバレアリック・ムーブメントなるものを初めて知ったのだが、それはもしかしたらChris Cocoが監修・執筆したものだったかもしれない。

Café del Marは「チルアウトの店」ではなかった
もうひとつ重要なのがここ。現在ではCafé del Marというと、ホテルやラウンジで流れるような「癒やし系BGM」を想像する人もいる。しかし、José Padillaが作ったCafé del Marの音楽はもっと自由だった。
Soul、Rock、Electronic、Ambient、Jazz、Folk、House……
「夕陽だからこういう曲」という固定観念ではなく、夕陽という時間と場所の中で、その曲がどう響くか。
それが重要だった。
DJ MagのBalearic史でも、José Padilla以前からイビサでは一人のDJがSoul II Soul、Timmy Thomas、The Cure、Front 242など、まったく異なるジャンルを一晩の中でプレイすることが普通だったと紹介されている。
これこそBalearicの原点。ジャンルではなく、選曲によって音楽をつなぐ。Chris Cocoが現在も続けていることは、実はこの精神とほとんど変わらない。
Coco Steel & Lovebomb――実はWarpからも出していた
Chris Cocoを「Café del Mar系DJ」とだけ考えると、この部分を知らない人は驚くかもしれない。1990年代、Chris CocoはLene Stokes、Craig WoodrowとともにCoco Steel & Lovebombを結成。そして1994年、彼らのアルバム『It!』がWarp Recordsからリリースされている。

WarpといえばAphex Twin、Autechreなどを輩出した、英国エレクトロニック・ミュージック史を代表するレーベル。
Coco Steel & Lovebombの『It!』は、ハウス/ダンス・ミュージックを基盤にしながら、よりメロウで実験的な方向へ進んだ作品だった。代表曲「Feel It」は1991年の作品で、その後もWarp関連コンピレーションなどに収録されている。
ここから1997年の『New World』、1998年の『Sun Set』へ進むと、さらにアンビエント/チルアウト/Balearic的な色彩が濃くなっていく。

つまりCoco Steel & Lovebombを追っていくと、
Acid House
→ House
→ Electronic
→ Ambient
→ Chill Out
→ Balearic
というChris Cocoの音楽的な変化そのものが見えてくる。
「Yachts」を聴けば、また違ったChris Cocoが見える
Coco Steel & Lovebombの代表曲としてもうひとつ挙げたいのが「Yachts」。A Man Called Adamがミックスを手掛けた1999年の作品で、Chris Cocoのラウンジ/チルアウト方面を代表する楽曲のひとつ。
この頃になると、クラブのピークタイムとは正反対の、空間や時間そのものを楽しむ音楽へと完全に視野が広がっている。しかし、その奥にはアシッド・ハウス時代から培ってきたDJの感覚がある。だからChris Cocoのチルアウトは、単なる「眠れる音楽」ではない。グルーヴがある。この違いは大きい。
BBC Radio 1、Robbie Williams、そしてMelodica
Chris Cocoの活動範囲はさらに広い。
2000年代にはRob da BankとともにBBC Radio 1の深夜番組『The Blue Room』を担当。クラブ・ミュージックだけではなく、実験的な電子音楽やチルアウトまで自由に扱える番組だった。
また、Robbie WilliamsのツアーDJを務めた経験もある。DJ Magazineの編集者、BBC Radio 1のパーソナリティ、メジャー・アーティストのツアーDJ、そしてプロデューサー。現在の「Balearic DJ」という肩書だけでは、彼が歩いてきた道のりはほとんど分からない。そして現在は、彼のライフワークとも言える毎週のラジオ/ミックス・ショーMelodicaを続けている。
自身の公式プロフィールでも、classic house、future house、dub disco、Balearic、さらにIbizaのsunsetまで自在に行き来するDJとして紹介されている。
Chris CocoにとってBalearicは「ジャンル」ではない
Chris Coco本人のBalearicに対する考え方を知ると、今回のプレイがさらに楽しみになる。以前のインタビューで、彼はBalearicの魅力について、そもそも定義できないことが美しいという趣旨の発言をしている。
José PadillaがCafé del Marでプレイしていた、ジャンルを飛び越えた選曲。電子音楽もあればオーガニックな音楽もあり、奇妙な曲もあれば誰もが知っているヒット曲もある。それらを混ぜて、一つの音楽的な旅にしていく。Chris CocoにとってのBalearicとは、まさにそういうものだ。
だから彼のDJを聴くときは、「次に何という曲がかかるか」だけではなく、「なぜ今、この曲なのか」に耳を向けると面白い。
須磨から元町へ。舞台は変わったが、Chris Cocoには似合っているかも
今回、残念ながら本来予定されていた須磨の海辺から元町へと会場が変更された。変更先のder kiten atelierは、普段から展示、ライブ、DJ、ポップアップなどに使われている小規模なクリエイティブ・スペース。元町駅からすぐの距離にあり、いわゆる大型クラブとは違う親密な空間だ。
むしろ今回のChris Cocoには、このくらいのサイズ感が面白い。音楽好きが集まる場所で、時間の流れに合わせて選曲を変えていく。それこそChris Cocoが長年やってきたことだからだ。しかも同店にはハイエンドなスピーカーも完備されているのもポイント。
1994年のCafé del Mar Volumen Unoをリアルタイムで聴いていた人も、José PadillaのBalearicに夢中になった人も、Coco Steel & LovebombのWarp作品を持っている人も、最近のBalearicやChill Outから入った若いリスナーも。
そして、そもそもChris Cocoという名前を今回初めて知った人も。ぜひ一度、彼のDJを体験してほしい。
10月25日(日)15:00 OPEN
der kiten atelier(神戸・元町)
■DJ
・CHRIS COCO
from UK
■Local DJ
・AB
・werikyo
・kobayashiii
■After Party Selector
・Yonezawa(Nadja)
■ナチュラルワイン
・Nadja
■Entrance Fee
・web前売り
¥2000
https://soku-ticket.jp/qr1/s/5979/v/mpfxZ/
・DM前売り
¥2500
・当日
¥3000
※前売りは限定30枚、限定数に達した場合
当日券の発売はございません
※前売りは10/24 23:59 締切
※入場時に要ワンドリンク代






