さすらいのDJ兼航海士ushiro氏による海外レポ第2弾が届きました!
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かれこれ5年になるだろうか。
「ベルリンのクラブへ行きたい・・・!」と切望し続けていた。
そして2026年、ようやくその地へ舞い降りた。
泊まったホテルからの景色。いざ夜の街へ
Paloma Bar
ホテルからタクシーで10数分。Kottbusser Tor駅の目の前に、Paloma Barはある。
音漏れを頼りに階段を上ると、2階にエントランスが現れた。
階段に貼られたACIDのステッカーがいい感じ
受付には優しそうな老人。先客の男2人組に何やら店の説明をしていた。
どうやら折り合いがつかなかったのか、彼らは出口へと向かっていった。
やがて我々の番。
「ここはDJ Barで、普通のBarではありません。
酒を飲むだけなら他へ行ってください。
あなたはPaloma Barの音が好きですか?
中は撮影禁止です。それでも良ければどうぞ。」
機内でSpotifyのPaloma Bar Playlistを聴いていた私にとっては、愚問だった。
中へ入りキャッシャーに約20€の入場料を支払った。
雰囲気で言うと京都のクラブ"West Harlem"に似ていた。
店内は片側がガラス張りになっており、外の様子を窺うことが出来た。
深夜でも走り続ける電車が印象的だった。
その日は"Spread Silk On My Heart Vol.2"というイベントが行われていた。
アジア系のDJ3人によるTechno,House系のイベントである。
賑わっているフロアに入り、DJブースまで近づき機材を確認したところ、Allen & Heathの4chミキサーに2 x ターンテーブル、2 x CDJがインストールされていた。
まずは手慣らしにと、身体を慣らすように踊る。
そのまま朝まで踊り、外が明るくなり人が疎らになった頃、Paloma Barを後にした。
Renate Garden
次に訪れたのはRENATEという施設でのクラブ・イベント。
その日は"It's not over! Renate NYE: 86H w Ben Sims, Lewis Fautzi, Felicie, Stephanie Sykes, Beau Didier"という、86時間にも及ぶ年越しイベントの最終日昼間。
Ostkreuz駅から雪道を歩く。
アパート群の先に敷地が現れる。
RENATE GARTEN
その敷居を曲がったところにRENATEの入り口はあった。
ここにも門番は配置されており、中での撮影、喫煙が禁止とのルール説明の後に、スマホのカメラ・レンズ部分を隠す封印シールが渡された。
入場料は1人50€ほど。
中に入ると小さな広場が現れた。RENATE GARDENと呼ばれる公園である。それをL字型に古いアパートが囲み、その内部でクラブ・イベントが行われていた。
複数ある入口は重たいドアで閉ざされており、耳を近づけると僅かな音漏れが聞こえてくる。その音を探すように片っ端から扉を押していくと、施錠された扉に紛れて階段へと続く扉が見つかった。
2階へ上がるとDaniela CastというDJがヴァイナルでプレイしていた。
https://ja.ra.co/dj/danielacast
心地の良いミニマル・サウンドである。他にもフロアがあるようだったが、昼間ということもありここしか解放されていなかった。
タイムテーブルを確認すると、1DJ =3時間で交代。これぞベルリン・マナー。
彼女のセットを見届け、一度退場。
日付が変わった深夜、再訪。
人は倍増し、フロアは3つが開放されていた。
Hard Techno, Psyche Trance, Minimal Technoといったジャンルわけであったが、昼にも訪れたMinimalが最も心地よい。
DJはSecret Guestとされており、USのエレクトロ系ユニット"Hercules & Love Affair"に似たルックスのDJがプレイしていた。
ブースの横にはお立ち台のような空間があり、ハードゲイのような男がフロアを煽って大盛り上がりを見せていた。
靴が引っ付く程にベタベタのフロア
埃っぽい空気
性別関係なく愛し合う人々
すべてが美しかった。
仮にこの空間を丸ごと地元神戸へ持ち帰っても、同じ空気は生まれない。
この空気は街ぐるみで作られており、さらにそこに集う者すべてが時代の一員であるという責任を帯びているからこそだ。
そう感じた瞬間、私はフロアの隅で一人、涙を流した。
そのイベントは4時頃に終了し、我々は次なる音を求めてTresorへと移動した。
Tresor
電車でJannowitzbrücke駅まで移動してから徒歩圏内にあるTresorへ訪れた。

昼間のTresor
こちらも年末から続くNYEプログラムの最終日だった。
これまでのクラブと同様に、入口で撮影禁止シールをスマホに貼られてから地下へと降りていく。
中は暗く、ところどころ赤いランプが灯っておりうっすらと内装を確認できる。
まるで防空壕を改造したような、コンクリート剥き出しの無機質な空間である。
メインフロアへ向かう途中にサブフロアがあったが、朝を迎えて最終選曲に至ったところだった。
その先にトンネルのような空洞があり、そこを抜けていくとメインフロアが現れた。
DJブースは檻のような格子で囲まれており、そこにダンサーが捉まって色気のあるダンスを踊っている。
ハッピーな空気で溢れており、ここも素晴らしい空間だった。
ここでドリンク事情について触れておこうと思う。
これまで行ってきたクラブのバーカウンターでのドリンク価格はおおむね以下の通りだ。
ビール約5€(約1000円)
ワイン6〜7€(約1300円)
ロングカクテル約10€(約2000円)
ジントニックなどがロングカクテルとジャンル分けされており、約2000円(!)だった。モノにもよるがワインが安いのが印象的だった。
またでバーテンダーにワインの種類を尋ねたところ、試飲までさせてくれた。
クラブらしからぬ、とても親切な対応だった。
そのワインを飲みつつベンチに腰をかけていると、他の客から声をかけられた。
アジア人が珍しいのだろうか。
『どこからきたの?
「真夜中のドア」(メロディーを口ずさみながら)とか聴くよ。
ベルリンでどこのクラブに行った?
Sisyphos Nightclubって箱がおすすめだよ。僕の一番好きな場所さ。』
というようなことを云っていた。
その後トイレの近くのベンチで座っている時も、別の客から声をかけられた。
どうやら“座る”ことが会話の合図らしい。
フレンドリーな街。
Tresorを出るとすっかり昼になっていた。
最寄りのJannowitzbrücke駅に向かう途中、Kitkatというクラブの前を通った。
"Life is circus"と書かれた入口が印象的だった。
中にこそ入らなかったのだがここはドレスコードが厳しく、なんと下着の派手さまで審査されるらしい。突き抜けていて最高。
RSO.Berlin
NYE気分の締めとも云える日曜日はRSO.Berlinという箱へ行ってきた。
まるで城のような外観
Schöneweideという、クラブ街から少し外れた駅から徒歩10分程の場所に位置する。
工場の跡地だとかで、広い土地を有している。
ここでも入口はドアマンのチェックがあった。
せいぜいクラブ内でのルール説明かと思っていたのだが、ここは少し違った。
ルール説明に加えて
『今までBerlinでクラブに行った?』
というような事を聞かれた。前述の数々を挙げた中で、Renateに反応していたように思う。
詳しいことは言語の壁により理解できなかったのだが、じゃあOK!という具合で中に通してもらった。
そうしてクロークへ上着を預けた後にRSOの重たい扉を開いた。
まず目に入ったのは通りがかった二人の"乳"。
ほぼ裸のような格好の女性二人が目の前を過ぎて行ったのだ。
迷路のような室内をうろついたが、クラバーの半数は同様にほぼ全裸みたいな恰好だった。
しかも音はHard Techno。今までの箱の中では一番危険な空気が漂っていた。
ドアマンのしつこい質問は優しさだったのだと理解した。
ベルリンのクラブは、元の建物を大切にしている。
綺麗にリノベーションするではなく、自分たちの手で安く(もしくはそのまま)改装してクラブにしている印象だった。
それはベルリンの歴史に由来するのだろう。
例えるならば映画"AKIRA"のネオ東京に似ていた。
国民達が主導権を握り、自分達の手で作られた街という印象だった。
愛に溢れていて優しく、それでいて少しの危険さを孕んでいる。
そんなベルリンを、私は居心地が良く感じた。
最後になったが、ベルリン屈指、いや現在世界屈指のTechnoハコ"Berghain"(ベルグハイン)について記述しておこう。
世界にクラブは数多く存在するが、クラブ・ミュージックが観光の目的になっている街は数知れている。しかしベルリンは確実にその街である。そしてBerghainは今旅行の最大の目的であった。
Berghain
イケズなまでにバウンサー(ドアマン)が厳しい事で有名なBerghainだが、かく言う私も御多分に洩れず撥ねられた。
その体験で良ければ記述しておこう。

Berghain
序章
まずベルリンでの宿選びの段階で、最大の目的地Berghainから最寄りのホテルを選んでいた。
チェックイン時に
『なんでわざわざ日本からベルリンに来たの?』
と尋ねられたので
『I want to go Berghain』
と答えると、カウンターの彼は微笑んでいた。
生憎その週末のBerghainのプログラムは、土曜日の夜から始まるPanorama barだけの営業だったのだ。
https://www.berghain.berlin/de/event/80708/
それを承知の上で、金曜日の夜に街へ出たついでにBerghainへと訪れた。
駅裏にある公園を上っていくと、それは現れた。ポツンと建った工業的な施設である。
扉が閉ざされていたが、一人列を作っている若者がいた。
私も一度はそれに並んでみたが、やはり営業している気配がないのでPaloma barへと移動した。
1st 土曜深夜
土曜から日付が変わって日曜1:00頃にBerghainへ訪れた。
Berghainは長蛇の列ができると聞いていたのだが、ゲートの開いた入口にはドアマンの姿しか見えず、列などなかった。
たどり着いたその足でドアマンに声をかけるが、「今は受け付けていません」といったジェスチャーのみで入れてもらえなかった。
その足でRanart へと向かった訳だが、現地で会ったクラバーにその事を話したところ
『今日はPanolama barしかやっていなくて、特別なプログラムだから入りにくいと思うよ。ちなみに僕は先週Berghainへ行ってきたよ』
とのことだった。
2nd 日曜の朝
Ranateの帰りにもう一度訪れた。
前回同様列はなく、同じように返された。
3rd 日曜夕
一度ホテルへ帰ってBerghainについて調べたところ、非公式ながらリアルタイムで情報交換している掲示板の存在を知った。
そこではBerghainの列や内部の状態、担当のドアマン等について書き込みされていた。
どうやら現在の中の様子は空いているらしく、キュアの方々にとって居心地の良い空間とのことだった。
それまで私は嫁と同行していたのだが、今度は2人別れて時間差での入場を図った。
Berghainは相変わらず列がなく、先行した私は前回同様に撥ねられた。
数分後に入口へ向かった嫁は中に通されていたのだが、いかんせん私の方を振り返った結果
『お前ら仲間か。ならお断り』
といった具合で撥ねられて帰ってきた。
4th 日曜夜
ベルリンでのNYEムードも終わり、開いているクラブの数が減っていた。
Berghainへと近づくと、少し離れた所にある広場で雪合戦をしている若者達が見受けられ、入口には列ができ始めていた。
ドアマンはガタイの良い、怖そうな雰囲気の黒人が立っていた。
話で聞くBerghainの空気に近く、いよいよといった感じがした。
(それでも列は短かった。)
私の前にはカップルが並んでおり、さらにもう1組が先頭にいた。
その1組は再入場だかですんなり中へ通された。
そして前のカップルの番になってから沈黙の時間が訪れる。
数分後おもむろにドアマンが会話を始めた。
D(ドアマン)『今日は誰をみにきた?』
C(カップル)『…。入りたいです』
D『我々は特別なDJを呼んでスペシャルなプログラムを提供している。失礼の無い様に、しっかりしたお客さんしか中に入れる事はできない』
と。そうして出口へ向かうようジェスチャーをしていた。
カップル(特に女性の方)はかなり悔しそうだったが、Berghainを後にしていた。
我々は巻き込み事故の様に、そのカップルの列を詰めた勢いでそのまま出口へと案内された。
悔しい。けれどこれがBerghainの洗礼かと、踵を返してRSOへと向かった。
5th 日曜夜2
RSO帰りに再度Berghainへと訪れた。
列は無く、先ほどのバウンサーは交代して優しそうな女性が立っていた。
今回は会話をしてくれた。
B『誰をみにきたの?』
私『Roman Flugelを見にきました。』
ここで言語の壁が生じる。①②のどちらかを聞かれていたと思う。
①『ここへ来るのは初めて?』
②『Berlinのクラブは初めて?』
私『(①と認識して)はい、初めてです』
その後、スタッフ内で軽く相談会が開かれ、程なくして
『ごめんなさいね』
と出口へ向かわされた。
これが私のBerghainでの顛末だった。
あの時の質問が②だったとして、『Renateに行った』などと返していれば入れたのでは…と後悔したものの、後の祭りである。
それよりも、Berghainが駄目ならばと他のクラブへ転換できるBerlinの街ぐるみでのクラブ環境に感謝である。
Text by ushiro






